催眠術のかけ方から催眠療法の技術まで催眠誘導研究所

催眠術のかけ方/催眠誘導研究所・林貞年

◇ 催眠療法

※ 心身症
  ストレスや心の負担が身体の不調となって現れる症状を心身症といいます。
心身症のもっとも良い治し方は病院(精神科・神経科・診療内科)で薬を処方してもらうことです。
最近では薬の進歩も著しく、ほぼすべての症状に効果があるといってもいいでしょう。
しかし、薬を飲んでも風邪を治すように、二、三日で治ることはまずありません。
なぜなら、心の性質が絡んでいるからです。それも自分では意識できない、無意識の部分に原因があるからです。
この無意識をどうコントロールしていくか、心の未発達な部分をどう成長させていくかといったことが催眠療法の真髄であり、治る力を加速させるのです。
潜在意識の性質を考慮したカウンセリングを行なわない限り、催眠をどう使っても改善には向いません。

※ 暗示療法
  催眠といえば、催眠術師のひと言で、内気な人が女性を口説き始めたり、逆にプロレスラーのような男性が催眠術師に「あなたは女性です」と暗示されると、まるでニューハーフのように振る舞います。
こんな現象を見ていると、「自分の内気な性格は一瞬で治せるのではないだろうか?」「自分の悩みは催眠をかけてもらえばたちまち解決するのではないか?」などと思ってしまいます。
しかし、人間にはホメオスタシスといって普段の自分に戻そうとする強い力があります。その力は催眠のそれより遥かに強力で、催眠の暗示では何も解決できないのです。
なぜなら、催眠の暗示を受け取る無意識はとても小さい無意識だからです。
無意識は「個人無意識」「家族無意識」「社会無意識」「生命無意識」「宇宙無意識」といったように、何層にもなっているのです。これを心理学者ユングは「集合無意識」と名づけています。

※ 無意識
  催眠は無意識(潜在意識)に働きかける心理技術です。
普段、自分が意識できる心は顕在意識といい、氷山に例えたとしたら、表面上に浮かぶわずかなものでしかありません。
しかし、潜在意識は水面下に沈む巨大な部分であり、心のほとんどが無意識でできています。そして意識できない心の習慣によって、人は快適な毎日を過ごしたり、苦痛な毎日を過ごしたりしているのです。
人が生きて行くうえで、潜在意識の働きは大きな力を持っています。
だからといって、無意識に働きかける催眠が人の生活を左右するわけではないのです。
先ほども言ったように、無意識には断層があります。
テレビなどで見せる催眠は、上っ面の無意識に働きかけているだけなのです。
たとえば、映画館へ行って悲しい映画を観たとします。あなたは涙を流すかも知れません。それでも、映画が終わったあと、「私は映画館にいたのか?」といって驚く人はいないでしょう。
催眠も同じです。どんなに深い催眠に入っていても、自分がどこにいたかを忘れることなんてありません。それは、深いところにいる強力な力をもった無意識が、ずっとあなたを見守っているからです。催眠は深くかかればかかるほど自分が変わらないように無意識が見守るようになります。つまり、催眠を使っても、簡単に人を変えてしまうことなどできないということです。

※ 催眠分析
  心の病には過去の出来事がネックになっている場合があります。
過去に受けた心の傷をトラウマというのですが、本人が覚えているような出来事は催眠分析の対象にはなりません。
たとえば、「男の人が近くに来ると胸が苦しくなって呼吸がしづらくなる」とか「水を見たら足がすくむ」とか、なぜそうなるのか解らないものに対して催眠分析は、その利用価値を発揮します。
催眠分析の代表的なものといえば、『年齢退行』というものがあります。
「あなたの年齢が逆戻りします」と暗示して、クライアントの年齢を24歳、23歳、22歳、21歳といったぐあいに数えていきます。すると、本人が忘れていた過去の辛い出来事が表面化してくるのです。
訳の解からない症状だけでは対処に困っていたものでも、原因である出来事が意識にあがってくることで、克服するべき対象が鮮明になるといった利点があります。
たたし、深い催眠に入り、年齢退行がしっかり成立してある場合は、除反応といって、クライアントが取り乱してしまう危険性があります。これは前世療法を行うときも同じで、セラピストは充分に心して施術しないといけません。
この現象は催眠の特徴であり、臨場感が伴うために起こる現象です。クライアントは当時うけた恐怖がよみがえってくるので、除反応が出すぎてしまうと心が受ける負担はかなりのものになります。

※ 自分との対話
  過去の出来事を意識化するための作業としては、臨場感を強く受ける年齢退行のようなアソシエートワークに対し、臨場感を抑える自分との対話法といったデソシエートワークがあります。夢の中で、自分自身の目で物事を見ているのがアソシエートなら、夢の中で自分の姿が見える第三者的立場にいる状態をデソシエートといいます。
自分が過去の辛い状況にいることを第三者の立場から見ている状態で催眠分析を行うことで除反応を弱くすることができます。
たとえば、「あなたの目の前には大きな壁があります。壁の向こうにはもう一人のあなたがいます。のぞき穴からのぞいて見ますか?」というと、私の経験上ほぼ間違いなく深い深層心理が映し出されます。
そこで見えてくるもう一人の自分は、泣いていたり、苦しんでいたり、怒っていたり、喜んでいたりと、色々です。
そして、そのままもう一人の自分に「何がそんなに悲しいの?」「何がそんなに苦しいの?」と理由を尋ねると、その原因を答えてくれるのです。
結果的に年齢退行と同じような催眠分析ができるわけです。

※ 苦手克服
  たとえトラウマの原因が意識化したり、ストレスの原因が意識化できたとしても、それを乗り越えてしまうまで解決には至りません。
恐怖を乗り越えるには本人が『恐怖突入』を繰り返すしか方法がないのです。
ある女性はひどい水恐怖症で、お風呂にも入れず、濡れタオルで体を拭くといった毎日を送っていました。
催眠分析で明らかになったのは、小さい頃にプールで溺れた経験があるということです。彼女がやるべき恐怖突入は、自らの意思で水の中に入ることです。
親や兄弟が代わりに恐怖突入しても、なんの解決にもならないし、遊園地のお化け屋敷に入り、恐怖突入することでも、ジェットコースターに乗ることでもありません。
彼女自身が水に立ち向かっていかない限り解決はしないのです。
しかし、プールやバスタブに貯まった水を見るだけで身体が振るえ出し、いても立ってもいられなくなる。
こんな状態では恐怖突入もできない。
そこで催眠の手法であるメンタル・リハーサルが役に立つのです。

※ メンタル・リハーサル
  恐怖突入をしなくては乗り越えられない。しかし、恐怖が強すぎて恐怖突入の入り口にも立てない。
では、その入り口に立つための練習はないのだろうか?
そう、ここで催眠の特性が生きてくるのです。
催眠状態ではイメージに臨場感が伴います。しかし、催眠状態にある本人は、それが現実でないことも分かっています。
この、リアル感はあるけれど、現実ではない中立の現象を利用するのです。
クライアントを催眠状態にして、お風呂もしくはプールに入るところをイメージ誘導していきます。
これが恐怖突入への練習となり、現実での恐怖突入を可能にするのです。
この手法をメンタル・リハーサルといいます。

※ 系統的脱感作(けいとうてきだつかんさ)
  現実ではないと分かっているとはいえ、恐怖症を抱えた人にとってはやはり恐怖です。催眠状態の中だからといって、いきなり水の中に入っているイメージは除反応を呼び起こしてしまうでしょう。
だから少しずつ少しずつ恐怖に突入して行くのです。
そのイメージがプールなら、遠くからプールを見ている自分をイメージしてもらいます。
そこからプールに向かって歩いて行き、プールサイドに立つところまでイメージを誘導していきます。
途中で不安を感じたら右手をあげるように命じておき、右手があがったらすぐにリセットする暗示を与えて催眠から覚醒(催眠から覚ます)させます。
覚醒後に感想を聞き、クライアントが落ち着いたところで再び恐怖突入の練習をします。
このように少しずつ恐怖に馴らしていくのです。そして恐怖が恐怖でなくなるまでメンタル・リハーサルをつづけます。
クライアントはメンタル・リハーサルによって、出来なかった現実での恐怖突入がやがてできるようになります。
ここでカウンセリング・ルームから現場での訓練に移行するのです。
ここまで読んで、催眠療法が「想像していたものと違う」と思った人は多いのではないでしょうか?でも、これが実際の催眠療法です。
そこにはテレビで見せるような神秘的な背景はどこにもありません。

※ 催眠術と禁煙
  テレビの催眠術でよく見かける、タバコがまずくなるというパフォーマンスがあります。
暗示をかけられた被験者は、ゴホゴホとむせて、とてもマズそうにします。
こんな現象を見ていると、さも簡単に禁煙などやってしまいそうな催眠術ですが、実際には催眠の暗示ごときで禁煙などできないのです。
催眠のショーやパフォーマンスはだいたい外から投げ掛けた暗示です。催眠が終われば時間と共にすぐなくなってしまいます。
悲しいドラマを見て悲しい気持ちになっても、ドラマが終わって家族と楽しい夕食をとると、悲しい気持ちはどこかにうせています。これと同じようなものです。
禁煙に不可欠な絶対条件は、内側から出て来る、「自分の意思でやめる」といった決断です。
医者に「タバコをやめなければ死んでしまいますよ」などと言われたら一発でやめられるのでしょうが、催眠の暗示はそこまで力を持っていません。
なぜなら、どれだけ深い催眠状態にいても、大きな無意識は自分が暗示を受けていることを認識しているからです。ドラマを見て涙を流すのと変わりはしないのです。
喫煙がひどければひどいほど、自分の意思を強くもたなければなりません。
催眠で暗示をかけてもらえば禁煙できると思うこと事態が他力本願であり、必要不可欠な自分の意思を弱くしてしまうのです。

※ 催眠ダイエット
  自分に変化を起こそうとしたとき、潜在意識(無意識)と顕在意識(意識)とが同じ方向を向いているのが理想です。
変化を起こす過程で、無意識上に敷かれたレールが必要になる場面と、意識的な努力が必要になる場面が必ずあるからです。
無意識は自分の枠の中でもっともいいものへ向かっていきます。
ですから、催眠状態の中で痩せて幸せになっている自分と、太って苦しんでいる自分を繰り返しイメージすると、無意識は痩せている自分に向かって歩み始めるのです。
しかし、潜在意識の最大の敵は怠慢です。本人が何もしなければ、文字通り何も起こらないのです。
ダイエットに催眠を使ったときの落とし穴は「私は何もしなくていいんだ、お金を払って暗示を入れてもらってるんだから、勝手に痩せていくはず」と思ってしまうことです。
無意識的なモチベーションアップと持続については催眠を繰り返すことで効果はありますが、「天下の催眠術を受けてるのだから、寝る前にハンバーグのひとつやふたつ食べても太るはずがない」と思ってしまうと逆効果になってしまうのです。
努力なくして変化など起こりません。
我々が催眠ダイエットの依頼を受けるときは、このクライアントは甘えに負けないと判断した場合、もしくはセラピーが進んでいく中で、怠慢が減退していくであろうと判断したときだけです。
催眠がダイエットの役に立つとすれば、脳の弛緩がもたらすストレスの軽減です。
人はストレスを感じたときに食欲がなくなる人と、過食してしまう人の二つのタイプがあります。
ストレスを感じたときに、食べ過ぎてしまうタイプの人は、強い人レスを感じているときにダイエットをスタートしても失敗に終わるだけです。
慢性的なストレスで必要以上に食べ過ぎてしまう人は減量を試みてもなかなか難しかったりします。それに対し、催眠がもたらす脳の弛緩は心を安定させてくれるので、必要以上に食べ過ぎてしまう部分に関して楽に我慢ができるといった感じです。催眠はダイエットに対して、この程度しか役に立たないのです。

※ 自己催眠術習得
  自己催眠を習得するにあたり、もっとも手っ取り早い方法は、一度他者にできるだけ深い催眠に導いてもらうことです。
自律訓練法をはじめ、訓練によって他人の力をかりずに習得する方法もありますが、普通の人でおおよそ半年はかかると言われています。
ちなみに、他人の手をかりずに自分ひとりで自己催眠を完成させた人を私は知りません。
人に催眠術をかけるのは思いのほか簡単ですが、自分に催眠をかけるのはおそろしく難しいものなのです。
催眠術のかけ方というのはいろいろな種類があり、相手の性質に合わせた方法でリードしていきます。
型にはまったやり方や、決まったセリフを唱えるだけでは催眠に導けないのです。
どこまで相手に合わせられるかが成功率を左右します。
極限まで相手に合わせるために我々はバッテリーという技法を用います。
ある人は右手より左手のほうが誘導暗示によく反応するかもしれません。
ある人は言語暗示より思考を静止させる生理的技法のほうがより催眠に入っていけるかもしれません。
イメージ誘導にしても、上から下へのイメージもあれば、右から左へのイメージもあります。
バッテリーワークというのはこういったクライアントの性質を探し出すための作業なのです。

※ ニューロン・インプルーブ・コントロール
  催眠療法をやっていて、一番多くいただく問い合わせが、「どのくらい通えば治りますか?」といった質問です。
この質問に対し、期間を明確に答える催眠療法士がいたら、あとでトラブルになるか、クライアントが泣き寝入りするかのどちらかです。
催眠療法の期間は、外科で診察を受けたあとのように「一ヶ月ぐらいで良くなりますよ」といった、おおよその見当もつきません。
現在の状態だけでなく、クライアントが元々持っている性質までもが関係してくるからです。
我々の催眠療法における理念は、NIC(ニューロン・インプルーブ・コントロール)理論に基づいています。
『ニューロン』は脳の中の神経細胞であり、『インプルーブ』は育てるという意味があります。
催眠はその人の中にあるものを引き出すことしかできません。
つまり、弱い部分は鍛えて育てるしかなく、催眠はそのための道具であり、催眠自体は何も与えることができないのです。
弱くて細いニューロンは鍛えて太くするしかなく、逆に日常生活に支障をきたしているような、強くて太いニューロンは減退していくように導いていくしかありません。
たとえば、不安神経症の症状を持った人は、不安に連動するニューロンが強くて太いのです。だから何が起きてもすぐ不安に結び付けてしまう。自分の意識ではどうにもならず、日常生活がままならないのです。
たとえ、一瞬の出来事がトラウマになって始まった不安神経症だったとしても、一瞬で治ることはないのです。

※ 催眠療法に要する期間
  一度できてしまったニューロンが減退していくには、そのニューロンが活動しなくなってから最低21日かかると言われています。
禁煙で説明すると、タバコを吸わなくなってから21日間ではなく、タバコが欲しくなくなってから最低21日間かかるということです。
弱いニューロンを強化させるにも、できてしまったニューロンが減退していくにも、必要とする期間があり、一瞬で治そうとする催眠暗示が役に立たないことを改めて納得します。
クライアントの様子を見ながら、ニューロンの減退と向上をコントロールしていくのが我々のセラピーです。
心の負担が大きく、安静や薬が必要なときはフォローし、向上が必要なときは恐怖突入を繰り返し、「自分は大丈夫なんだ」という自分を信じるニューロン、つまり自信を育てていくのです。
いわば、催眠療法は治療というよりは、トレーニングの部類に入るのです。
元々体力も持久力もある人と、運動が苦手なうえに運動不足の人にプールで水泳を練習させても、同じようには成長していきません。
運動不足の人が、25メートルを足を着かずに泳ぎきるまでには、ある程度の時間がかかります。これがセッション期間の違いです。
本人も気づいていないような、こころの深部が相手ですから、レントゲンを見て「だいたい一週間で治ります」といったような判断ができないのです。
その人の性質と、負っているこころのダメージの絡みの中でセラピーが進んでいきます。
ちなみに、NIC理論については、私の著書『上位1%の成功者が独占する願望達成法』『潜在意識をコントロールする自己催眠術』などに詳しく書いてあります。
これまで催眠療法に関するいくつかのお話をしてきましたが、これは催眠療法のほんの一部です。
催眠にはいろんな使い方がありますし、使い方次第では劇的な改善をもたらします。
その半面、地味な作業を地道にやっていかなくてはいけないものもたくさんあります。
また、セラピストによって催眠の使い方が違えば能力も違います。
催眠療法を受けようと思うのなら、まずはセラピストに直接相談してみて、自分が納得してからセッションを受けることです。

現在、多忙のため新規のクライアントは受け付けておりません

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